急性冠症候群とは?
心臓へ血液を運んでいる冠状動脈が突然詰まると、心筋細胞は壊死します。これが急性心筋梗塞です。また冠状動脈が詰まる一歩手前の状態が、不安定狭心症です。併せて急性冠症候群と呼ばれています。不安定狭心症の状態で適切な治療が行われれば、心臓にダメージはほぼ残りません。しかし、急性心筋梗塞になってしまうと、心機能低下となり、それ以前に生命の危機となります。
急性冠症候群の症状は?
急性心筋梗塞と不安定狭心症はともに冠状動脈の血流が悪くなる病気ですので、症状に大きな違いはありません。ただし急性心筋梗塞の方がより強くかつ長い時間の症状であることが多く、突然胸全体がしめつけられるような痛みが発生するのが特徴的です。この痛みが肩・背中・首・歯・頭に及ぶこともあります。冷や汗を伴う重苦しい痛みであることが多いのですが、その程度は、気を失いそうになるものから、軽い圧迫感程度のこともあります。さらに糖尿病の方やご高齢の方では、症状がはっきりしないこともあります。また、心筋梗塞になる前に不安定狭心症の症状が出ることがあります。安静時に⓾分程度続く胸部圧迫感や、朝の通勤歩行時の胸部重圧感といったものであり、こういった症状が出現した数日以内に急性心筋梗塞発症を発症することがあります。
急性冠症候群が疑わしい場合は?
急性心筋梗塞による死亡の多くは、症状が始まってから最初の数時間で起こるといわれていますので、治療を少しでも早く開始するほど救命率は高くなります。ですから、急に胸が痛くなった場合にはすぐに救急車を利用し、できるだけ早く病院へ到着することが重要です。また症状が数分程度で収まったとしても、不安定狭心症の可能性があります。この場合は急性心筋梗塞の一歩手前と考えて、早期の病院受診をおすすめします。
急性冠症候群の緊急治療をはじめ、あらゆる心臓病の治療を日々行っています。 特に急に胸が痛くなった場合は、迷わず救急車で受診してください。
〈たけもとけんじ〉愛知県半田市出身 1991年名古屋大学卒業。2008年循環器内科代表部長、2012年より救命救急センター長