
救急NEWS
救急科代表部長 田渕昭彦
(2019年9~10月発行 いんふぉめーしょんこうせいより)
今夏は、連日35度に迫る酷暑が続きました。ここ数年来、夏場の気温上昇が叫ばれていますが、同時に熱中症を発症する患者数も増加傾向にあります。マスコミでは高温注意報が毎日のように流れて、積極的な水分補給を促していますよね。
一般的には『のどが乾いた』時には、早めに水分補給をするべきと理解されていますが、のどが渇いた時にはすでに脱水状態は始まっているのです。健康な人の場合、体重の約1%に相当する体液の損失によって、喉の渇きを感じるようです。しかし、高齢者では喉が渇いたという自覚症状を感じにくくなっているため、熱中症を起こしやすくなります。
私たちの身体の60%は水分でできています(新生児80%、乳児70%、成人60%、高齢者50%)。水は人間にとって最も大事な栄養素であり、毎日のように大量に失われる水分を補う必要があります。水は、消化、吸収、循環、排泄機能を含む身体機能を維持することに加え、体温を維持する上で主要な役割も担っているのです。
ではどれだけ水分を摂取すべきでしょうか?活動量や高温環境などの条件によって大きく影響されるため、これだけ摂取すれば安全という基準は見当たりません。普段の食品の中にも十分な水分が含まれています(ご飯・パスタ=70~80%前後)。活動量の少ない人は麦茶などの飲料で十分ですが、アスリートのように激しいスポーツをする人は、大量の発汗に伴い水分とミネラルが消失するため、経口補水液やスポーツドリンクなどを摂取すると良いでしょう。
水分補給の吸収スピードを加速させる鍵は糖質と塩分にあります。脱水症の簡単な見極めとして、経口補水液(塩分濃度=0・3%)を飲んで「少ししょっぱい」はずの味覚が、「無味」または「甘い」と感じたら『かくれ脱水症』の可能性があります。水分補給のポイント『こまめに』・『意識的に』・『運動時には必ず』を忘れずに、健康的な体調維持を心がけましょう。