麻酔科代表部長 森田 正人
(2019年1~2月発行 いんふぉめーしょんこうせいより)
麻酔科医の存在意義
大きな病院には麻酔科医がいます。麻酔科医は手術室だけでなく、集中治療室、救命救急でも活躍しています。麻酔科医は患者さんの命を守るスペシャリストです。そのため命の危険が生じ得る患者さんがいる場所に必要なのです。手術をするのは外科医。診断をするのは各専門医。長い視野に立って治療するのは内科医かもしれません。麻酔科医はものすごく短い時間で変化している患者さんの状態を瞬時に把握し、生命を維持するところで力を発揮します。手術室は患者さんにとって命の危険が生じ得る場所です。中には管理がとても難しい患者さんもいます。 手術中、患者さんの状態は急激に変化します。麻酔科医は手術を受けている患者さんのそばにずっと寄り添い、全力で患者さんの全身管理をしています。麻酔行為の中で患者さんを眠らせることは麻酔のごく一部にしか過ぎません。当院の手術件数は年間約8300件ですが、その中でもより難度の高い約3300件の手術患者さんを麻酔科医が全身管理を行います。これからも我々麻酔科医は手術中の患者さんの命を守るために頑張ります。
命を守るから術後回復へ
当然ですが、麻酔科医は手術を受ける患者さんの命だけを守っているわけではありません。患者さんが手術後にいかに元の生活に早く戻れるかに配慮しています。手術を受けている患者さんの体に生じる有害な事象を防いだり、なるべく影響する時間が短い薬を使用して全身麻酔から患者さんができるだけすっきりと覚醒できるように心がけています。そして痛みを軽くすることが、患者さんが元の生活に戻る上で非常に大切です。麻酔科医は手術後の痛みを取るために最大限の努力を行っています。しかし強い鎮痛対策は合併症とも背中合わせです。患者さんの状態や手術内容に合わせて、痛みを減らすことと合併症を減らすことを天秤にかけて、よりよい麻酔管理・疼痛管理を目指しています。
手術前の術前診察 麻酔導入のようす
麻酔管理上問題のある患者さんは麻酔科外来で診察しています。手術中は、麻酔科医がそばに寄り添い注意深く管理します。
麻酔科医は、手術を受ける患者さんがいかに早く元の生活に戻れるかを考えて日々麻酔(全身管理)を行っています。
〈もりた まさと〉1997年長崎大学卒業。刈谷豊田総合病院、静岡県立子ども病院、名古屋市立大学麻酔科助教を経て、2014年より麻酔科代表部長。※2011年日本臨床麻酔学会大賞受賞