内分泌・糖尿病内科 代表部長 水谷直広
(2018年6月発行 厚生連情報 より)
糖尿病を見過ごさないで
糖尿病は、血液中の糖が増える病気です。症状が出にくい、もしくは口の渇きや尿が増えると言ったような病気らしくない症状のため、病気に気付かず、残念ながら放置してしまう人が多いようです。しかし、長年血糖値の高い状態(いわゆるドロドロ血液)を放置すると、合併症で様々な病気を引き起こす可能性が高くなります。手足の痺れ、失明、透析、足の壊疽、心筋梗塞、脳梗塞など、生活に困る状態になる前に対策が必要です。
現在、日本では2,000万人(全人口の6人に1人)が正常より高めの血糖値になっており、50年前と比べて35倍も増えています。これは、食の欧米化で脂肪をよく摂るようになった、自動車の普及で運動不足になった、遺伝など、様々な原因があると考えられています。過去には「ぜいたく病」と呼ばれた時代もありましたが、「贅沢したから糖尿病になっても仕方無いわ」と思える人はそう多くありません(たまにはいらっしゃいますが...)。周りの人と比べて贅沢な暮らしをしていなくても、日本の生活そのものが糖尿病になりやすい環境へ変化してきていると言えます。食事を腹八分目(きつい人は九分目)にする、間食やジュースを控える、なるべく体を動かすなど、日常生活の中で気を付ける事が病気の治療に結びつきます。最近10年ほどで使用できる薬の種類も増え、治療のオーダーメイド化も進んでいます。
昨今の健康ブームに乗って新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットなどで糖尿病に関する記事を見ない日はありません。本当に効果がある物であれば医薬品として採用されると思うのですが...。なかには「少々高額な値段で本当に効くかな?」と思うようなものも珍しくありません。「これを飲めば食べれば糖尿病が良くなる!」といった情報に振り回されずに、医療機関を受診しましょう。「健診を受けて血糖値で引っかかったけど、症状も無いから病院には行っていないよ。」というあなた。「いつ受診するの?今でしょ!」
<みずたに なおひろ> 2000年岐阜大学卒業。2018年度より 内分泌・糖尿病内科代表部長。