市民公開講座開催レポート

2025年5月15日に第120回市民公開講座を開催しました。今回は緩和ケア内科代表部長の沖哲が講師となり、がん終末期の栄養面に関する講演を行いました。当日は20名を超える市民の方にご参加いただきました。~以下、講演を一部抜粋~
そもそも、がん終末期って?
- 病状が不可逆的かつ進行性で,その時代に可能な最善の治療により、病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避になった状態
- 期間の目安・・・ 数週間から半年程度で死を迎えると予想される時期が一般的な目安とされる ※1
がん終末期におこる体の変化と症状

・がん終末期に身体機能の変化について表したグラフ
がん終末期に起こる体の変化
- 数ヶ月前にできていたことが、できなくなる
- 1ヶ月前にできていたことが、できなくなる
- 1週間前にできていたことが、できなくなる
- 数日前にできていたことが、できなくなる
- ついには昨日できていたことが、できなくなる
加速度をつけながら身体の状態が悪くなるのが特徴

がん悪液質について
がん終末期では,がん悪液質と呼ばれる代謝異常が起きます。これは単なる低栄養ではなく,がんに伴う炎症,筋肉減少,脂肪減少,代謝変化などが複合的に関与する不可逆的な状態です。
- 点滴からたくさんの栄養を投与しても体内で水分や栄養が利用できない!
- 余剰な水分は浮腫や胸水・腹水となり、苦痛を増す結果に…
食事面・栄養面について
がんによる代謝異常に対する特別な栄養サポートや支持療法、症状に伴う摂食不良に対する病状コントロール、悪液質に対しての食べられる食材の提案など栄養・食事のサポートを行っていきます。
ガイドラインの推奨する治療
〇積極的な栄養投与を行っても有効に利用されないばかりか、代謝上の負荷となり生体に対し有害となることがある。
〇積極的な栄養投与を控えることを推奨。(※2)
〇水分・栄養療法による体液過剰兆候が苦痛を増悪させる場合、患者・家族の意思を尊重した上で減量・中止を検討。
〇水分・栄養療法が患者の苦痛を和らげている可能栄がある場合は、患者・家族の意思を尊重した上で継続。(※3)
- 食べてはいけない!ということではない
- 好物をごく少量つまんだり、水分を摂ったりしてもよい
- 「食べないと元気にならないよ」といって無理に食べさせるのは×
~最期の日に何を食べたいですか?~
- ´がんの終末期のおいて,最期の日までしっかり食べられることは稀
- ´食べられなくなる日は個人差はあるが,少し前に来ることが多い
終了後、「知らないことがたくさんあり、勉強になりました。」「知りたいこと(がん悪液質)について、知るいい機会でした。」「緩和ケアについてもっと知りたい」などの意見を頂きました。
※1 日本老年医学会 全日本病院協会 終末期医療に関するガイドラインより
※2 終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン
※3 がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き
緩和医療センターのご紹介
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